もう、我慢すんのやめた


「はぁ……はぁ……っ、芽唯!」


私の目の前まで来て、足を止めた佐倉は肩で息をしながら私を見つめる。


その瞳に映る自分を見つめながら、

名前を呼ばれただけで、キュンと疼いて止まない胸に必死に落ち着け!って言い聞かせる。



「佐倉、どうしてここにいるの?」

「安藤に聞いてっ、……芽唯に、会いに来た。……俺も、芽唯に話したいことがある」


真剣な佐倉の表情。
見つめながら思うのは、やっと会えた……ってこと。

木曜日に話したばかりなのに、たった3日経っただけで随分と前のことみたいに感じる。

もう、私の涙を拭ってくれないって佐倉は言ったけど。やっぱり、私は佐倉にこの先も涙を拭って欲しいし、佐倉の胸の中で泣かせて欲しい。


そう伝えたら、佐倉はどんな顔する?
怒るかな、困るかな、笑うかな。


それに、佐倉の話って?
私の中でほのかに期待と不安が入り交じる。


もしかしたら、って。
佐倉も私のこと……って。


でも、そこまで考えて、弥一を好きだった時の記憶がフラッシュバックして、私の中のもう1人の私が、必死に自分にブレーキをかけた。

両思いかもしれないなんて自惚れたら、結局違った時に傷付くのは自分だよって。
< 224 / 233 >

この作品をシェア

pagetop