もう、我慢すんのやめた


3コール目が鳴り終わるより少し早く、プツッと機械音が途絶えて


『っ、もしもし?今どこ?』


私が口を開くより先に、佐倉の慌てたような声が私の耳をくすぐった。


「えっ?あ、私は蒼海水族館を出て少し歩いたところ!」

『少し歩いたところ、って……』

「え?佐倉、今どこ?あのね、話があるんだけど、これなら会えるかな」

『……見っけた』

「え?」



佐倉の言葉に、辺りをキョロキョロと見回す。
今、見つけたって言ったよね?
それって……佐倉も近くにいるってこと?



「芽唯!」


───!!


後ろばかり気にしてたのに、正面から名前を呼ばれて思わず2度にしてしまった。

だって、なんで佐倉がここにいるの?


駆け寄ってくる佐倉を目で追う。今日は”芽唯”って呼んでくれた……って、たったそれだけでこんなにも満たされていく心。


会いたくて、寂しくて、恋しくて、愛しくて。
今日まで、佐倉宛の想いをどれだけ隠してきたんだろう。



「佐倉……!」


もう、誤魔化したくない。
もう、この気持ちに嘘はつけない。
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