おじさんは予防線にはなりません
きっと池松さんは私たちがそこまでの関係なんだってさらに安心するだろう。
そうなればたぶん、いまよりももっと前の関係に戻れる……はず。

でもそれは宗正さんの気持ちを利用した、最低の行為だ。
いまだって宗正さんの気持ちを知っていながら、甘えている。
これ以上の甘えは許されないのはわかっている。

しかし私とペアの指環をつければ宗正さんは、無駄に媚びを売ってくる女性を相手にしなくてよくなるのだ。
私は池松さんの安心を得られ、宗正さんも女除けになるんだったら、ウィンウィンでいいんじゃないのか。

「これとか似合うんじゃないかな?」

私の気持ちなんか知らずにイヤリングを私の耳元に当ててみながら、宗正さんは無邪気に笑っている。

「……大河」

「詩乃?
どうしたの?」

イヤリングを棚に戻し、宗正さんは心配そうに私の顔をのぞき込んだ。
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