おじさんは予防線にはなりません
「その、池松係長、ほんとにいいんですか?」

大河が遠慮がちなのもわかる。
私だってほんとにいいのか気になるもん。

「ああ、ボーナスもらったっておじさんは、こんなときくらいしか使い道がないんだ。
遠慮するな」

「じゃあ、遠慮なく!」

大河の顔がぱーっと輝き、うきうきとメニューを開く。
こういうとこほんと、羨ましい性格をしている。

「羽坂はいいのか?」

「だいたい、た……宗正さんに任せてたら大丈夫なので」

大河、って言いかけて慌てて言い直す。
ここしばらくの付き合いで、大河は私の好みや食べる量を私以上に把握していた。

「宗正を信頼してるんだな。
そういうのは……羨ましい」

少しだけ笑った池松さんは淋しそうなんだけど……奥さんは池松さんを信頼していないんだろうか。
< 189 / 310 >

この作品をシェア

pagetop