おじさんは予防線にはなりません
大河が注文をすませ、すぐに飲み物が出てくる。
池松さんと大河は生ビール、私はカシスソーダ。

「んー、羽坂がこれからも長く、勤めてくれることを願って。
かんぱーい」

軽く三人でグラスを合わせたものの、すぐに大河がぶーっと唇を尖らせた。

「確かに、そうなんですけど。
でもそれだとオレ、いつまでたっても詩乃と結婚できなーい」

大河の口から出た二文字に、手がびくっと反応してしまう。

派遣と正社員の夫婦は社則で同じ職場にいられないと池松さんに聞いている。

それに前に大河は言っていた、このペアリングをただのペアリングにする気はないって。

意味はわかっていても、はっきりと言葉に出されると動揺してしまう。

「宗正が会社を辞めれば問題ないだろ」

「池松係長、酷いですー」

大河が泣き真似し、池松さんはにやにや笑いながらビールを飲んだ。
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