おじさんは予防線にはなりません
でもいまは。

――忘れて焼き肉、楽しもう。

「でも意外だったな。
まさか宗正が羽坂が付き合うなんて思ってもなかった。
しかも、結婚まで考えてるなんて」

池松さんは新しいお肉をお皿から焼き網の上にのせた。
さっきから結婚、結婚と言っているが、池松さんの中では私と大河が結婚するって決定事項なんだろう。

「池松係長、なんかオレのこと、誤解してるー。
オレは詩乃みたいに可愛い子が好きなんですよ。
しかも一本、ちゃんと筋が通ってるとか最高じゃないですか。
だから池松係長も詩乃を可愛がってたんでしょ?」

ゴクゴクとビールを一気に飲み干し、大河はがつんとジョッキをテーブルの上に置いた。
じっと池松さんを見つめる大河に一瞬、その場がしんと静まり返った。

「まあな」

じゅーじゅーと肉の焼ける音だけが響く。
まわりの喧噪はまるで、遠い世界の出来事のようだ。
< 192 / 310 >

この作品をシェア

pagetop