おじさんは予防線にはなりません
「前の派遣の子だって、確かに気遣ってましたけど。
ここまで頻繁にメシ誘ったりとかしてなかったですし。
もしかして、詩乃に気、あるんじゃないですか」

大河はきっと酔っている。
だからこんな、池松さんを挑発するようなこと。

「そりゃ、羽坂は可愛いさ。
頑張り屋でうちの社員たちの難癖も堪え忍んで。
そのくせ、愚痴や嫌みも言わない。
可愛がりたくもなるだろ。
……でもな」

言葉を切ってビールを一口飲み、かつんと堅い音を立てて池松さんはテーブルに戻した。
瞬間、ピンと大河の背筋が伸びる。
私も知らず知らず、背筋を正していた。

「人として好意はあるがそれだけだ。
恋愛感情なんてない。
それに俺には妻がいる。
妻以外の人間を愛するなんてあるわけないだろ」

じろり、眼鏡の奥から睨まれ、大河の背中がびくんと揺れる。

「……すみません。
オレ、飲み過ぎてたみたいです」
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