おじさんは予防線にはなりません
布浦さんは自分の要求が通って満足したのか、機嫌よく売り場へ消えていった。

はぁーっ、もう癖になっているため息をついて椅子に座り、少しのあいだ、どっぷりと沼に浸かる。

……気をつけてって自分が前方不注意だっただけだよね。
私が急に目の前に飛び出してきたんじゃないんだし。
間に合うよねって、間に合っていないですよね。
もしかして、私と違うカレンダー、見てますかー?

心の中で愚痴を吐き出し、一度大きく深呼吸して俯いていた顔をあげる。
こんなことでくよくよしていたら、ここではやっていけないのだ。

あとで知ったが、ここは派遣社員がすぐに辞めることで有名な部署らしい。
もって一ヶ月、早いと一日。
病んで辞めた人もいるという話だが、その理由はよくわかる。

「おーい」

「はいっ!?」

いきなり隣から聞こえた声に驚いて視線を向けると、隣の椅子に池松さんが座っていた。
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