おじさんは予防線にはなりません
「なんでもないんです。
なんでもない、ですから」

必死に、袖を引いて引き留める。
いま、池松さんが出ていけば、よけいにややこしいことになる。

「……羽坂が、いいのなら」

「はい」

しぶしぶ、だけどやめてくれてほっとした。


仕事中、みんなちらちらと私と大河をうかがっていた。
大河の指環はそのままだったけど、――私の指環が、消えていたから。

「大河ー、羽坂と別れたの?」

布浦さんの無神経な猫なで声が響き、その場のいた全員の背中がぴくりと震えた。

「……」

じろっ、大河が怒りをあらわにして睨んでいるのに、布浦さんが気づく様子はない。

「ねー、羽坂と別れたんだったら、私と付き合お?」
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