おじさんは予防線にはなりません
大河は追ってこないどころか、なにも言わなかった。

「おっと」

泣いている顔なんて人に見られたくなくてトイレに駆け込もうとしたら、ちょうど出社してきた池松さんとぶつかった。

「……どうした?」

一気に、池松さんの表情が険しくなる。

「なんでもない、です。
ちょっと目に、ゴミが入って」

「宗正と喧嘩でもしたのか」

人が笑って誤魔化そうとしているのに、核心を突いてくる。

「だから、なんでもないですって」

「俺が、言ってやる。
昨日の夜はなにもなかったんだって」

「池松さん!」

私が駆けてきた方向へ一歩踏み出した彼は、足を止めて振り返った。
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