おじさんは予防線にはなりません
待っていた早津さんは、すまなさそうな顔をした。

「それで。
マルタカを辞めたいってことなんですが……」

うかがうように彼が私を見る。
難しい職場で半年も続いた私が辞めるとなると、いろいろあるのだろう。

「はい。
十月からの契約延長したのに申し訳ないですが、今月いっぱいで辞めさせてください」

誠心誠意、あたまを下げる。
無理を言っているのはわかっていた。
つい先日、十月からさらに半年の延長契約をしたばかりだから。

「その、羽坂さんにも都合があるんだと思います。
一応、理由は聞かせてもらわないと」

「そう、ですよね」

――理由。

いまだってまだ、思いつかない。
いっそ、早津さんが言っていたみたいに田舎に帰るとか言うか。
けれどそれだと今後、仕事を紹介してもらうのに支障が出る。
かといって正直に話すわけにもいかない。
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