おじさんは予防線にはなりません
「あー、はい。
わかりました」

終わったら派遣会社で、そう約束して電話を切る。
約束はしたものの私は彼に、うまく辞める理由を話せるのだろうか。

今朝、いまの派遣先を辞めようと決めた。
池松さんの気持ちを知ったいま、もうここにはいられない。

片想いでもかまわないと思っていた。
報われなくても、ただ傍にいられたら、って。

でも、どんなに想っても無駄なんだと現実を見せつけられたいま、傍にいるのはつらすぎる。

「既婚者に失恋したから、なんて言えないよね……」

帰るまでに早津さんが納得してくれそうな理由を探さないといけない。



仕事が終わり、重い足を引きずって派遣会社へ向かう。
結局、適当な辞める理由は思いつかなかった。

「わざわざすみません」
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