おじさんは予防線にはなりません
「……でも、離婚が成立したからなんて割り切れないし」

「……」

もそもそとお肉を食べながら、池松さんはぼそぼそと話している。

「……しかも離婚を言いだしたのは世理だし」

「……」

これは、池松さんも私を想ってくれているということでいいんだろうか……?
けれど、いままでのことからまだ気持ちの整理がつかないだけで。

「……きっと、羽坂を待たせると思う。
それでいいなら、……待っていて、ほしい」

池松さんの姿が滲んでいく。
これは煙が目に染みるから?
なんだか胸がいっぱいで箸を置いた。

「羽坂?」

「なんでもない、です。
……あ、ジョッキ、もう空ですよね?
なに飲みますか?
ビールでいいですか」
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