おじさんは予防線にはなりません
前回も前々回も確かに男性ひとりだと入りづらそうなお店だった。

パソコンをスリープにしてお財布と携帯を入れた小さなバックを手に席を立つ。

池松さんと一緒に出て行っても誰も文句を言う人はない。
これが若手男性社員の白沢(しらさわ)さんとか宗正(むねまさ)さんだと、非難囂々、魔女裁判にかけられかねないけど。


並んで歩くとき、池松さんはいつも私のペースに合わせてくれる。

そういうとこ、紳士だなーって思う。

クラシカルな、サーモントブローの眼鏡のせいか地味に見えるけど、顔は結構整っている。
スーツだってよく似合っているし、ネクタイのセンスも悪くない。
若い頃はモテてたんじゃないかな。

「ん?
どうかしたのか?」

私が顔を見ているのに気づいたのか、池松さんの首が僅かに傾いた。
なんだかちょっと恥ずかしくて、顔がほのかに熱くなる。
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