おじさんは予防線にはなりません
「えっ、あっ、そうか。
うん、そうか。
そうか、そうか」

落ち着かないのか、せわしなく上下左右を見ながら、右手で、左手で、池松さんはあたまを掻いている。
やっぱり迷惑、だったのかな……。

泣きたくなって俯いた。
もしかしたら心のどこかで、喜んでくれると思っていたのかもしれない。

「うん、じゃあ行こうか」

「……え?」

池松さんは伝票を手に、すでに席を立っている。
なんだかわからなくてぽかんと見ていたら、強引に腕を引っ張られた。

「役所、行くだろ。
婚姻届、出さないとな」

これは、子供ができたから責任を取るということなんだろうか。
そんな、義務感だけで結婚なんてしたくない。

「あの、別に、責任取ってくださいとか言うつもりはないので」
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