おじさんは予防線にはなりません
「どっちもこの、デザートセットって奴で。
飲み物は食後にコーヒー。
……で、いいよな?」

いたずらっぽく八重歯を見せて池松さんが笑うから、なにも言えなくなって黙って頷いた。

店員は注文を復唱し、メニューを手にカウンターへ戻っていった。

「遠慮するなって言ってるだろ」

池松さんはおかしそうに笑って、グラスを手に水を飲んだ。

「でも……」

何度言われてもやはり、悪いなって気持ちになる。

「おじさんは正社員で、しかも羽坂よりずっと年上なの。
その分、給料だってもらってるし、うちは小遣い制じゃないから。
素直におごられとけ?」

「……はい」

にかっと笑う池松さんが眩しくて、つい目を細めてしまう。
毎回、池松さんはそう言って私に絶対、お金を払わせないが、嬉しくもあり心苦しくもある。
< 31 / 310 >

この作品をシェア

pagetop