おじさんは予防線にはなりません
パチン、私に向かってウィンクして、世理さんは去っていった。
いなくなるとはぁーっ、池松さんからため息が落ちる。

「悪いな、妻が。
悪気はないんだが、性格がおかしいんだ」

池松さんは力なく、はははと小さく笑った。

「でも、池松さんはそんな奥様が好きなんですね」

「……まあな」

くいっと眼鏡を押し上げた、池松さんの耳は赤くなってる。

なんかそういうのはいいなと思いつつ、――俺には全くそういう気はない。
そう言った池松さんの言葉がどうしてか胸にチクリと突き刺さっていた。
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