おじさんは予防線にはなりません
姿勢を元に戻すと、視線が斜め上を向く。
そっちになにかあるのかと見てみたけれど、なにもなかった。

「よかったら俺が、選んでやろうか。
……なんてな」

池松さんはくいっと眼鏡をあげ、腕を組んで完全に横を向いてしまった。
いや、そんなふうに照れて冗談にして誤魔化すなら、言わないで欲しい。

――そういうのはかなり、可愛いので。

「じゃ、じゃあ。
お願いしてもいいですか」

自分でもなにを言っているんだろうとは思う。
でも、そうでもしないと決まらないまま買わないで終わりそうだし、それに。
池松さんがどんな服を私に選んでくれるか興味があった。

「は?
俺は冗談のつもりだったんだが」

組んだ腕をほどき、池松さんは信じられないものでも見るかのように、まじまじと私を見てくる。
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