この溺愛にはワケがある!?
「加藤さん?加藤美織さんかな?」

キョロキョロ辺りを見回し、そこに美織しかいないのを確かめると男性は言った。

「はい」

「どうぞ、入って下さい」

美織は部屋の前に移動した。
入る前にかかったプレートを確かめる。
そこには『院長室』の文字があった。

「まぁ、座って。診察なんてあってないようなもんだから」

と、院長は笑う。

(それでいいの!?)

美織は突っ込んだが、言われるままに豪華なソファーに座った。
院長はおそらく七十代後半、背が高く細身で目の辺りが隆政を彷彿させるように鋭い。
こっちのDNAも持っているな、と美織は院長をガン見した。

「そんなにじっと見られると照れます」

ふふふ、と笑いながら院長が言った。

「あっ!すみません。隆政さんに少し似てるな、と思って……」

「ああ、良く言われるよ。でも妹の方がもっと似てる」

「そうなんですか!?」

「兄妹で一番顔が凛々しいって言われてたからね。僕より男前」

と言って目尻を下げた。

(隆政さんのおばあさん……行政さんの奥さん、男前の?……全く想像出来ない!)

黒田小夏。
その人の顔形を思い浮かべてみようとした。
美織は必死で想像力を働かせたが、徒労に終わる。
乏しい想像力では、女装した隆政しか頭に浮かばず、その気持ち悪い想像に勝手に背筋を凍らせた。

「折角だから、叩かれたところ見せて?後で処置もして帰ってね」

「はい、すみません」

湿布を剥がし頬を向けると、院長はうーん、と言いながら顔をしかめた。

「結構強く叩かれたね?藤堂くんから聞いた時は、もっと軽症かと思ったけど。明日辺りもう少し腫れ上がるかも……」

「そうですか……はい。堪えますっ」

「跡は残らないと思うから、ちゃんと冷やしとこうね。大きめの湿布も出しておくよ」

「ありがとうございます」

院長はカルテにさらさらっと記入し、内線で誰かを呼んだ。
その誰かが来るまでの間、もて余す美織に院長が話を始めた。

「加藤さんは行政くんに相当気に入られているね、藤堂くん自らが動くってあまりないことだし」

「はぁ……良くわからないですけど、感謝してます」

「隆政との結婚も決まったんだよね?どこぞの令嬢と政略結婚でもさせそうな勢いだったのに、一体またどうしたんだか……」

(ですよね?どこぞの令嬢との政略結婚の方が現実的です。わかります)
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