この溺愛にはワケがある!?

隠された日記帳

暖かい腕の中で微睡みながら、美織は七重の過去について考えている。

加藤七重。旧姓、長谷川七重。
職業は中学教師。
同じく中学の教師だった夫の加藤修二とは職場で出会い、一年後結婚、長男悠(はるか)を儲ける。

七重の口から語られるのは修二や悠のことばかりだった。
修二との日常生活や、悠が小さい頃のイタズラや学校の成績、他愛もないやりとりまで美織は耳にタコが出来るくらい繰り返し聞かされている。
だが反面、行政や彼女自身の友達のことなど聞いたこともなかった。

「何考えてる?」

後ろ向きの美織の肩にそっとキスをしながら隆政が尋ねた。

「おばあちゃんのこと……おじいちゃんとお父さんのことが本当に好きだったんだなぁって……」

「みおのこともだろ?」

「……うん、そうだね。はぁ、何かないかな……おばあちゃんの過去がわかるもの」

「日記とか??」

「日記……かぁ……そんなもの残しておくかなぁ。私なら恥ずかしくて燃やす……いえ、そもそも書かないわ」

「まぁ、そういうタイプだな」

と、後ろからクスクスと笑う声が聞こえた。

「でも、おばあちゃんは……国語の先生だったの。達筆でね、手紙とか書くのも好きだった……もしかしたら日記も書いてたかもしれない……」

「………探してみるか?」

「だけど……」

美織は少し躊躇った。
自分の日記を見られていい気分のする者などいない。
それはどちらかというと見られたくないものだ。
自分の心の中を勝手に他人に見られることに等しい。
日記を見つけたところで、それを勝手に見てもいいものかどうか……。
美織はそれが気になっていた。

「わかるよ。気が引けるよな。だが、まだ日記があると決まったわけじゃない。とりあえず探してみないか?」

優しく髪を撫でる隆政に体を預けて、暫く考えてみた。
あるかないかはわからない。
でも、状況の打開には動いてみないと始まらない。
隆政の腕の中でクルリと反転し美織は言った。

「探してみる!手伝って隆政さん!」
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