この溺愛にはワケがある!?

絶望と希望と

美織は一度居間に行き、テレビを見ていた隆政の横に座った。

「終わった?」

「………まだ、もう少し。なんだか元気が欲しくて」

「コーヒーでも淹れようか?」

と、立ち上がろうとする隆政を美織は引き留めた。
そして、おっと、とよろける彼の腕を取りそのまま小動物のようにぎゅーっと抱きつく。

「珍しい。みおが俺に懐いている」

茶化して言ったが、本当は美織が落ち込んでいることなど、とうにわかっていた。
日記には核心に触れることが書かれてあったのだろう。
内容こそわからないが、隆政は自分に出来ることが何かは理解していた。

「大丈夫、俺が一緒にいる。日記、一緒に見るからな」

と、美織を優しく抱き締めた。

「うん、ありがと」

思ったよりはるかに重かった日記の内容は、一人で背負うには辛すぎる。
だけど、関係者である美織と隆政ならそれにも耐えられるような気がした。

七重の部屋から日記帳を持って、美織は隆政の膝上に移動する。
そこに誘導されたとはいえ膝上でなくても良かったとは思う。
だが触れ合う面積が多いほど安心するのも確かなのだ。

「じゃあ、つづき。読むよ」

「ああ」


『十二月四日

どうしよう………。
私はどうすればいいのでしょう。

今日、小夏さんのお見合い相手の写真を見せてもらいました。
それは、私がよく知っている人です。
小夏さんが言うには黒田造船の経営は思わしくなく、村上家の援助を欲しているとのことでした。
それで、行政さんと小夏さんの結婚を条件に資金援助をすることになったと……。
ですが、小夏さんはこうも言っていました。
行政さんには付き合っている人がいて、その人と結婚したいのでその話は受けいれられないと。
私のこと、でしょうか。
きっとそうだと思います。
私も行政さんが好きです。
一緒にいたい、先々では結婚したいとも……。
でも、それが正しいのかはわかりません。
わからないのです。


十二月十五日

今日は久しぶりに行政さんに会いました。
相変わらず彼はとても優しく、何一つ心配ないといいます。
会社の状態も、大分持ち直していると。
それが嘘であることなどわかります。
私だって、一年行政さんと過ごして来たのですから!
でも、彼は私を蚊帳の外に置きたがるのです。
それは、本当の信頼でしょうか。
何も知らせずにいることが、私の幸せだと思っているのでしょうか。
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