この溺愛にはワケがある!?

手紙

『四月八日

桜が美しく咲き誇り、頬を撫でる風も随分柔らかくなりました。
今日から、私は教師一年生です。
初めての赴任先は出身中学。
びっくりしたけれど、実家から通えて凄く楽です。
同じく新規採用の教師として赴任した加藤修二さんとも、春休みの間にだいぶ仲良くなれました。
彼も本が好きなようで、私が良く行く古本屋の常連だそうです。
そして、つい先日不思議な事実を知りました。

春休み中のある日。
私と加藤さんは例の古本屋へ行ったのです。
ですが背が低い私は、また欲しい本に手が届きません。
私は加藤さんに取ってくれるようお願いしました。
そこで……彼は私を見て大笑いしたのです。
「また、僕は君の本を取る係なのかな?」と。
その時、突然思い出しました。
彼は高校時代にここで出会った男子学生だったと。
本当に世の中にはおかしな偶然があるものです 』

「おじいちゃんと会ってたんだ……凄い偶然ね……」

「出会ってたのか……そんなに前に……」

おかしな偶然。
それに当てはまるピッタリの言葉がある。

「運命」

先に言ったのは隆政だった。
美織もそれに同意した。
そして、同時に安堵もしていた。
修二の出現により七重はこれから悠に出会い、その後美織に出会う。
途中数々の不幸が二人を襲うことになるが、それを払拭するくらい美織は嬉しかった。

「良かった……良かったねぇ」

「良かったな」

涙声の美織を抱き締め、隆政は囁くように言った。
その声にビクッと体が反応してしまい、思わず日記を落としてしまう。
バサッと落ちた日記帳。
それを拾い上げた時、白い四つ折りの便箋が下に落ちた。
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