この溺愛にはワケがある!?

想像した通りの展開

七重の日記で、三人の関係性と事情は大体把握した。
やはり小夏がヘソを曲げているのは、七重が行政のかつての恋人であり、その孫を無理矢理黒田の家に(隆政の嫁に)入れることが許せない。
と、そんなところだろう。
行政は小夏に七重のことを告げてはいないはずだ。
それは七重の日記からわかる
しかし、七重が行政を頼って書いた手紙。
それを小夏が先に受け取ってしまったことから発覚したのだとすると、一連の行動も納得が行く。
隆政と美織の見解は結局このように落ち着いたのだ。

「想像した通りの展開だな。一番厄介なケースだ」

「そうね。おばあちゃんを許せなくて引いては孫も許せない。ていう感じね。まぁ、だまされてたようなものだから、わからなくはないけど」

「だが、結果的にはうちの婆さんが爺さんを盗ったんじゃねぇか?」

「隆政さん、お言葉が……」

「ああ、悪い」

隆政は気が昂ると言葉遣いが悪くなるようだ。

「結果的には……ね。でも、心情的には負けたと思うわよ。手紙の通りに隆政さんと私を結婚させようとしてるんだから」

「それは俺の意志だ!爺さんと婆さんは関係ない」

「そうかもしれないけど……」

美織の心中は複雑だ。
確かに、行政の言うことは決定事項だろう。
七重の頃ならいざ知らず、今は黒田行政という名前がこの地方のブランドなのだ。
小夏の実家だって、今は黒田の系列病院に成り下がり言うがままになっている。
だが。
本当にそれでいいのかとも思っていた。
七重が日記を処分せずに美織に見せたこと……。
それは、何か意図があるのかもしれない。

「ねぇ、明日結納の前に黒田の本宅に連れていってくれない?」

「行ってどうする?」

眉間にシワを寄せて隆政は尋ねた。
会えば小夏は美織に心無いことを言うかもしれない。
そうすれば美織が傷付く。
隆政はそれを心配していたのだ。

「何が気に入らないか、直接聞くの」

「…………直接……か。思ったより、君は大胆だな」

「考えてもわからないもの。それなら、何か文句でも恨みでも言ってくれる方がわかりやすいでしょ?」

「何を言われても平気か?」

「平気。私、何も悪くないし」

ついでに言うと七重も悪くない。
と、美織は断言する。
そんな外見と全く違う血気盛んな姿に、隆政は益々惚れ直していた。
そして、何故この人に一目惚れしたのか、今更ながらわかった気がしていた。
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