この溺愛にはワケがある!?

結納への道!?

朝九時半。

黒田本宅から結納の行われるホテルへと四人は移動する。
もちろん、行政、隆政、小夏、美織の四人である。
憑き物の落ちたように爽やかな老夫婦を後部座席に乗せ、隆政の車はゆっくりと山道を下って行った。
途中、自分を除け者にして結婚記念品を選んだと、小夏が不貞腐れることもあった。
だが、それは行政の『君の好きなものも足せばいいじゃないか』の一言で簡単に収まった。
これに、異議を唱えた美織の言葉は当然後部座席には届かない。
小夏は行政の言葉に『まぁ、その通りだわ!』と手を打って喜び、夢見るような顔をして頭の中で品物を選別し始めていた。

「悪い……こうなったらもう、婆さんは止まらないんだ……笑って貰ってやってくれ……」

苦笑いをしながら、でも、少し嬉しそうに隆政は言った。
美織としても小夏が楽しそうなのは嬉しい。
しかし!だ!
規格外ファミリーの選ぶもの……。
どうせ『笑って貰えるもの』の範疇を超えるんだろう……。
ホテルで決めた時もかなりの品数(金額も)だったが、それに小夏セレクトが追加されるのだ。
行政セレクト、プラス、小夏セレクト……。
合計金額にゼロがどのくらい加算されるのか。
もう既に何を返したらいいかわからなくなっている美織は、助手席で一人頭を抱えていた。
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