この溺愛にはワケがある!?

愛すべき住民課の人々

「そして、加藤美織さんは見事家族の問題も解決し黒田隆政さんと幸せになりましたとさ」

昼休みの休憩室。
寧々は大袈裟に言いながら食後のデザートのプリンを口に運んだ。
そのプリンは美織の差し入れで、小夏が贔屓にする洋菓子店のもの。
結納が終わってから黒田の老夫婦は、何かしら理由を見つけては、粗末な平屋にやって来ていた。
その度にお土産を持って。
焼き菓子、洋菓子、和菓子。
食べきれないほどの甘いものは、昼休みに職場で皆で分けたりしている。
その恩恵に預かっている寧々は、ほくほくとした笑顔で美織に言った。

「いいですねぇー、デレ甘な彼にデレ甘な祖父母。有り余るお金に美味しいお菓子。円満な職場にそして何より、可愛い後輩っと」

「木ノ下さん、自分で言う?それ?」

美織は後半の気になる一言に突っ込んだ。

「あら、素敵な先輩もつけ足して」

と、今度は芳子が言った。
可愛い後輩と素敵な先輩は、食後のデザートをすっかり平らげると、ついさっき市役所に来た隆政の話題に花を咲かせる。
お昼休みの少し前、転居届を申請しにやって来たのだ。
今度はちゃんと発券機で番号札を取るという手順をふみ、美織が受け付けた。
その時の様子を、隣で見ていた寧々や芳子が面白おかしく再現する。

「(寧々)今度はみおが対応してくれるんだな(だらしなく笑う)」

「(芳子)ふふっ、うん。ちゃんと番号札取れて偉かったですねー(頭をよしよしとしながら)」

「(寧々)なっ!そんな、子供じゃねーし!(頬を膨らませムッとしながら)」

「(芳子)あら、ごめんなさい。でも、可愛いからつい……(ニッコリと微笑んで)」

と、二人は再現VTRのようにリアルに演じて見せる。
恥ずかしいというか何というか……こんな風に他人に見えているかと思うと顔から火を吹きそうだ。
どう見てもバカップル……。
それを、職場で披露してしまったということに美織は頭を抱えた。
そんな美織の心中をよそに、寧々と芳子は「どーよ?似てるでしょ?」と言わんばかりにニヤリとした。

「ううっ……お恥ずかしい……すみません……とんだ醜態を」

「えーー!いいじゃないですか!ちょうど昼休みに突入したところだったし、イチャイチャもセーフですよぉ!」

(いや、アウトだと思うよ………?)

「そうね、少しイラッとするくらいでね……ふふ、イラッとね……」

(ひぃっ!怖い!すみませんっ!)
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