この溺愛にはワケがある!?
「相応しいか相応しくないか。幸せに出来るか出来ないか……それは一緒にいるなかで見つけるものだと。見つけられなくても、一緒に生きていく過程で何かが形になっていく……」

隆政は美織の言いたかったことを、明確に言葉にした。
実際そこまで漠然と考えたわけではなかったけど、言われてみればその通り。
改めて黒田隆政という男の理解力と頭のキレに驚いた。
お勉強が出来るだけではこうはいかない。

「これは……プロポーズみたいだな」

「は??え?どうして?」

「死ぬまで一緒にいよう、ということだろ?」

キレる男は美織の言葉を深読みした。
確かに……わかるまで一緒にいよう、とはそういう意味にとれる。

「くそっ、俺のプロポーズより断然格好いいじゃねぇか!!」

隆政は悔しそうにそっぽを向いた。

「ぷっ!隆政さん?お言葉が汚くてよ」

「ああ、悪い。悔しくてつい……どうしようかなぁ、もう一度どこか夜景の見えるレストランでも貸しきってやり直すかなぁー」

「バカなこと言ってないで!早く食べちゃって!!片付かないでしょ」

別に早く片付けなくてもかまわない。
だが、思いがけず格好いいプロポーズをかました美織は照れていたのだ。
その照れを隠すために言ってしまった言葉に過ぎない。
馬鹿正直にそれを間に受けた隆政は、さっき手を付けかけた酢の物を口にして幸せそうな顔をした。

「旨いなぁ、料理上手で俺好みの味を知ってるところ、それも好きなとこのひとつだな」

「ありがとう。おばあちゃんの手料理みたいで華やかさは全然ないけどね!」

「みお、知ってるだろ?俺の口は小さい頃からそれに慣れている。親代わりはうちも婆さんだからな。婆さんの手料理が俺の求める味なんだ」

「そうか!!それで……」

(謎が解けた!隆政さんも味覚が同じなんだ。でも……味なんて家庭によって違うはず。隆政さんのお婆様と私の味が似るなんてことあるのかな?)

また別の謎が浮上し美織は百面相を始めた。
それを面白そうに眺める隆政は、冷めていい感じになったお茶を一気に飲み干した。
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