訳あり結婚に必要なもの
「僕以上に僕のことを知っていてくれる人、かな」
ややあって答えを教えてくれる三輪。
「自分を尻に敷いてくれる人とかじゃないんだね」
「好きでいつも敷かれている訳じゃないからね」
「敷かれているところしか見たことないよ」
「知ってる」
三輪は落ち込んだように肩を落とす。笑うときもそうだが、この人は感情が肩に表れやすい。
「お見合いしても、やっぱり気がつけば尻に敷かれてそうだね」
「うん。その未来が容易く見えるよ」
勢いよくビールを飲んだあと三輪は拗ねるように机に突っ伏した。あ、目がトロンとしてる。
「……どうせ尻に敷かれるなら、香澄さんがいいなぁ」
机に突っ伏したまま、やや潤んだ目であたしを見つめた三輪が不意にひとりごちた。その潤んだ瞳がゆっくりと閉じられる。
それは……あたしとなら結婚してもいいってこと?
「ねぇ、それって……」
どういう意味?と続かなかったのは、瞳を閉じてしまった三輪の口から「スー」という呑気な寝息が聞こえてきたから。
……寝たんだ、三輪。
そりゃあ、結構なハイペースだったもんね。
あたしは押し入れからタオルケットを取り出して、三輪の肩に掛けた。お客様ようにと買ったこのブルーのタオルケットは、今では酔いつぶれた三輪の専用となっている。
三輪はお酒がそこまで強くない。どこでも眠りこけてしまうから、そのまま寝落ちしてもいいように、二軒目はあたしか三輪のどちらかの家で飲むことにしている。
『三輪だって一応男だよ?』と周囲から忠告されるが、こうして三輪が毎度、寝落ちしてしまうので所謂『間違い』ということが起こったことはない。