かわいい戦争
声のした一番奥のテーブル席に目を移す。
そこには髪の長い客が2人、向かい合う形でラーメンを食べていた。
「幸珀さん!」
「あっ、海鈴ちゃん!おかえり」
やはりさっきの感想は幸珀さんの声だった。
それから幸珀さんの前に座ってるのは……男前な常連さん!?
「ほーらね。わたしの予想通り、皆でここに来たでしょ?」
「来ねぇと思ったんだけどな……」
「へっへーん!まだまだ修行が足らんな!てことで、約束通り剛の奢りで。ごちになりまーす」
「チッ、しゃーねぇなー。やっぱお前の野生の勘には敵わねぇわ」
「野生言うなし」
お2人、知り合いだったんだ。
仲良さそう。
どちらも長髪だから、ぱっと見女の子同士に見える。
「わあっ、剛さんだ!」
「……ん?おう、ひつじ。久し振り」
ぱあっと花を飛び散らせるみたいにテンションを上げたひつじくんに、男前なお客さんが片手を上げて挨拶する。
……剛さん?
ってどこかで聞いたような…………あああっ!!!
「車で聞いた、神雷の元副総長!?」
男前なお客さんが!?
驚きのあまり指差してしまった。
ハッとして手を下げるが、まじまじと凝視してしまう失礼は許してほしい。
だってまさかこんな近くに元副総長がいるなんて思わないじゃん!?
世間って意外と狭いんだ……。