わたしと先生。
私、受けられるんだ。
まだ、終わったわけじゃないんだ……。

よ、よかったあ……。
ほっと息をつく。
でも、それもつかの間。

『さっ、こっちに移って準備してちょうだい。時間は他の子と一緒だからね。』

『は、はい!』

そうして私は無事保健室で受験することができて。
力もいつも通り発揮して、見事香ヶ丘高校に合格することができた。

あの時は、試験のことで頭がいっぱいで。
助けてくれた先生のことを考えている暇もなかった。

でも、合格発表が終わって入学が決定してから。
助けてくれた先生のことを繰り返し思い出した。

ふわふわな黒髪天パ。右目に泣きぼくろ。垂れた目。
濃い紺のセーター。そして、力強い腕。

『名前、なんて言うんだろ……。』

あの光景が忘れられなかった。
あの腕の暖かさが、忘れられなかった。

また、会えるかな。

また会えることを夢見て、私は心を躍らせた。




「先生!」

そう声を張りあげれば、さっきの人がこちら振り向く。

瞬間。
強く風が吹く。

あまりの風の強さに思わず目を閉じてしまう。
それでも頑張って目を開ければ。

「……っ。」

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