【短編】きみの甘くない魔法
「なあ、ガトーショコラの作り方教えて。
甘さ控えめで」
「……また来たの?」
放課後の家庭科室。
3人しかいない料理部の部長である私は、1人でカップケーキを作ろうとしていた。
他の2人の部員は幽霊部員なので、部活に来ない。
だから私はいつもひとりでお菓子を作っている…はずだった。
きみが来るまでは。
「なあ、お菓子の作り方教えてくれない?」
隣のクラスの目立つ男の子。
コウ、って呼ばれてる名前だけは、違うクラスの私も知っていた。
友達も多くて、いつも楽しそうで、そんな彼がどうして家庭科室に来たのか。
「…好きな先輩が、甘さ控えめのお菓子が好きらしくて」
ちょっと照れたようにそう呟いたコウに、たまにお菓子づくりを教えることになってしまった。