はちみつの景色
昨日はなかなか寝付けなかった。
なんでか花山くんの柔らかな笑顔が頭から離れなかった。
そういえば、花山くんて…なんであそこにいたんだろう。
「果乃、お昼たーべよっ」
「うん、お腹減ったね」
夏子が私の席にきてお弁当を机に置いた。
「ねえねえ、千景〜。今日みんなでカラオケ行くけど、いかなあい?」
「俺、今日バイトあるから」
「え!千景バイトしてんの⁈どこでどこで⁈」
「私も、千景いるならそこでバイトしたーい」
「お前らな、千景にだってプライベートはあんだろうよ」
花山くんの周りにはお昼休みになると人だかりができていた。
男子はいつも固定して隣の席の佐藤くんたちだけど、女子は代わる代わるいろんな人がくる。
今だって学年で一番可愛い、名前なんだっけ…
その子が話しかけに来ている。
「果乃、相変わらず人気者だね、花山」
花山くんに背中を向けている状態の夏子は小声で言った。
「本当に、まあ、でもなんかわかるわ」
昨日の一件で、みんなから好かれる雰囲気があるなと思う。
「あれ、果乃?そんなに花山と知り合いだっけ」
「あ、いや、そんなしゃべったこととかはないけど、雰囲気?」
「ああ、雰囲気か。
でも花山、どこでバイトしてるんだろうね?」
「あー。ね、きっとバイトでも人気者だろうね」
もしかして昨日のがバイトかもしれない。でも、なんとなく夏子にいうのも違う気がする、というか自分だけの秘密にして言いたくなかっただけかも。
気がつくとお昼の時間は終わりに近づいていて、花山くんの周りの人たちも自分たちの教室に戻っていた。
「あ、5時間目始まる」
「本当だ、私ちょっと教科書借りてくる!忘れたんだった!」
「いってらっしゃーい」
夏子が教科書を借りに行ったところで、今日のお昼休みが終わった。