はちみつの景色
しかし、初日から話すなんてハードルが高すぎた。まず、俺のこと知ってるのかな、変なやつって思われてないかな。
晴人は、考えすぎって笑ってたけど、本気で悩む。
学校が終わると週3回はじいちゃんの雑貨屋で手伝いをしている。
古ぼけた店だけど、じいちゃんの宝物で、俺はそんなじいちゃんを尊敬しているから、手伝いと言っても癒されてるようなもんだった。
帰ってすぐに荷物を置いたら、店にでる。
「じいちゃん、変わるよ」
じいちゃんが囲碁サークルに行く時間だ。
「え、花山くん?」
聞き覚えのある声に、ハッとして、すぐに顔をあげた。
声の主は間違いなく中川さんだった。
「あ、中川さん」
動揺しているのがバレないように、落ち着いたトーンで喋った。
「それじゃあ、千景、あとは頼んだ」
「いってらっしゃい」
じいちゃんの見送りも適度になってしまった。
何から話そう?どうしよう?
「中川さん、家この辺?」
「あ、えと、いや…逆の西町?」
「あ、中川さん。俺のことわかる?席前後の…」
「わ、わかるよ、そりゃ」
知ってるんだ、嬉しい。
同じクラスだし当然といえば当然か。
「あ、えっと、1年間よろしく、中川さん」
言ってる側から恥ずかしい。
「うん、よろしく…」
黒の綺麗なストレートに透き通るような肌。目も優しそうで、本当に可愛かった。
すごく見とれた。
そしてすごく緊張した。
「なんか、緊張する」
あ、やべ。心の声が…
「え、花山くんが?」
ニコッと笑って応えてくれる。
「うん、俺緊張するタイプ」
「そんな風に見えないね」
「そう?」
中川さんがモテる理由がわかる。