はちみつの景色
「プリント配るぞー」
前から回ってくるプリント。
中川さんに渡すと毎回笑顔で会釈してくれる。だから、プリントを回すのはちょっと俺にとってはイベント感がある。
待てよ、プリントと一緒にメモを渡せば会話ができる…?
連絡手段はまだない。
ここでやるっきゃない!的な、空回りでノートの切れ端に手紙を書いた。
プリントを回すと同時にメモを放り投げた。
「何これ…」
中川さんが言ったけど、恥ずかしさやら、緊張やらで前を向いてしまった。
とにかく学校じゃあ、ゆっくり話できないし、何より、俺の好きな場所、じいちゃんの店に来て欲しい。
今日、もう一回じいちゃんの店来てくれない?
俺、バイトだから。
と書いて回した手紙に返事はなかった。
なかなか話す機会がなかったから、仕方ない。
…中川さんならきっと来てくれるはず。