はちみつの景色
昨日はなかなか寝付けなかった。
中川さんと話せたことはもちろん、これからどうしたらいいかをずっと考えてしまっていた。
「果乃、お昼たーべよっ」
「うん、お腹減ったね」
後ろの席で中川さんたちがお弁当を食べ始めた。
中野はバスケ部で中学も一緒だから、多分いろんなことを知ってると思う。もちろん中川さんと仲が良いのも知ってた。
俺も後ろ向いて食べたい…
「ねえねえ、千景〜。今日みんなでカラオケ行くけど、いかなあい?」
いつのまにかクラスじゃない女子が来て、俺に話しかけてきた。
「俺、今日バイトあるから」
普段自分からバイト話なんて絶対にしないのに、この女子とは何にもないってことをアピールしなければ、という気持ちが先にきてしまった。
「え!千景バイトしてんの⁈どこでどこで⁈」
「私も、千景いるならそこでバイトしたーい」
逆効果…完全にミスった。
「お前らな、千景にだってプライベートはあんだろうよ」
晴人が見兼ねて助け船を出してくれた。
気がつくとお昼の時間は終わりに近づいていて、中野が教科を借りに行くと言ったところで、周りも自分たちの教室に戻っていた。
「千景、お前隠してんだろ?なんで自分から言ってんだよ」
「助かったわ…ちょっと色々テンパってしまって」
そこでチャイムが鳴って、5時間が始まった。