流転王女と放浪皇子 聖女エミリアの物語
「アニキ、すげえ指輪してますぜ」

「どれどれ、おう、こいつぁサファイヤだな」

 母の形見の指輪を奪い取ろうと大男が手を伸ばす。

 とっさに隠そうとすると、若い男も横から腕をつかんで離さない。

「おとなしくよこしな」

「無礼者、手を離しなさい」

 大男がにらみつける。

「おう、ねえちゃん、なんなら指ごと切り落としたっていいんだぜ。殺しはしねえ。命があるだけましだと思いな」

 もう一人の男が後ろから顔を出した。

「なんだよ、殺せって言われたんだろ」

 大男が下品な声で笑う。

「殺したことにして、よその国で奴隷として売り払えば二度金になるってわけさ」

「そいつはいいな。高く売れそうだしよ。さすがだぜ、アニキは」

 大男が口をゆがめて笑う。

「でもよ、その前に、高貴なお嬢様の味見をしようじゃねえか。そうすりゃあ、三度もおいしいってな」

「へへへ、そいつはたまらねえな。そこらへんの女とは違うんでしょうねえ」

 味見という言葉に震えだしたエミリアを見て、男三人が下卑た笑みを浮かべながら迫ってくる。

「じゃあ、俺が先に味見するぜ」

 仲間割れのケンカが始まった。

「そんな、おいらが先だ」

「ずるいっすよ、俺にもやらせてくださいよ」

「てめえら、こういうものは親分の俺からって決まってんだろうが」

「アニキずるいじゃねえですか」

 文句を言われた大男が子分達をにらみつけた。

「なんだ、おまえら、文句あんのか」

「いいえ、どうぞどうぞ」

 大男がエミリアの顎に手をかけた。

「へへへ、こいつはうまそうだぜ」

 目をつぶって手で顔を隠したときに、張り手が飛んできて腕に当たった。

 エミリアは床に倒れてしまった。

「ら、乱暴はおやめなさい」

 目を閉じたままおびえた声を上げることしかできないエミリアに大男がのしかかってきた。

「おやめなさいだとよ。お上品だねえ」

「そそるじゃねえか」

「おいらもう我慢できないっすよ」

「おう、おまえら、高貴なお嬢様を押さえつけろ」

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