流転王女と放浪皇子 聖女エミリアの物語
狙い通り矢は飛んでこない。
視界の右隅に馬に乗った男の姿が入った。
街で見た男だ。
そちらとは思った以上に距離があった。
先にやるべきは矢を撃ってきたほおひげの方だ。
もう一度屈みながら草原を駆けて街道に戻る。
草むらの中から矢が放たれ、伏せたエリッヒの頭をかすめて飛んでいく。
街道に落ちている石をつかんで、ほおひげの敵が二の矢をつがえる合間にエリッヒは突進していった。
敵が一瞬ひるんだ気配を感じた。
仕留めるなら今だ。
だが、石を投げつけようとしたとき、エリッヒの耳にエミリアの悲鳴が聞こえた。
立ち止まってしゃがみ込み、声のした方を見ると、沼地で馬を下りた敵が彼女を引きずり起こしていた。
もがきながら抵抗する彼女を殴りつけている。
目の前の敵はすでに次の矢をつがえて狙いを定めているが、エリッヒにためらいはなかった。
矢を恐れるな。
助けたいと思うものに向かって一直線に駆けろ。
迷ったらその瞬間勝負は終わる。
エリッヒは頬をはたいて自らを奮い立たせた。
彼は向きを変えて草むらから飛び出すと、エミリアを助けに向かった。
背中から矢が飛んでくるが耳元をかすめただけだ。
次の矢までに彼女を助けなければならない。
二人の敵の間で一直線上に突っ込めば、同士討ちを恐れる敵は矢を射ることができない。
その一瞬の躊躇で距離は稼げる。
走りながら立て続けに二つ石を投げてエミリアを殴っている敵を威嚇する。
当たりはしなかったが、エリッヒの接近に気づいた敵は彼女を放り出して馬に跨ろうとした。
その瞬間、三つ目の投げた石が馬の頭をかすめ、跳びはねた馬から男が落ちる。
暴れる馬に蹴られて男が草の上に転がった。
逃げていく馬には目もくれず、エリッヒは倒れている敵に駆け寄って組み伏せた。
馬に腹を蹴られて動けなくなった敵は抵抗しなかった。
サファイアの指輪が小指にはまっている。
エリッヒは指輪をもぎ取ると、男の胸ぐらをつかんで引き起こした。
「狙いはなんだ?」
男は返事をしない。
まだ息をしているが口から血を流している。
「誰に頼まれた? 言え!」
視界の右隅に馬に乗った男の姿が入った。
街で見た男だ。
そちらとは思った以上に距離があった。
先にやるべきは矢を撃ってきたほおひげの方だ。
もう一度屈みながら草原を駆けて街道に戻る。
草むらの中から矢が放たれ、伏せたエリッヒの頭をかすめて飛んでいく。
街道に落ちている石をつかんで、ほおひげの敵が二の矢をつがえる合間にエリッヒは突進していった。
敵が一瞬ひるんだ気配を感じた。
仕留めるなら今だ。
だが、石を投げつけようとしたとき、エリッヒの耳にエミリアの悲鳴が聞こえた。
立ち止まってしゃがみ込み、声のした方を見ると、沼地で馬を下りた敵が彼女を引きずり起こしていた。
もがきながら抵抗する彼女を殴りつけている。
目の前の敵はすでに次の矢をつがえて狙いを定めているが、エリッヒにためらいはなかった。
矢を恐れるな。
助けたいと思うものに向かって一直線に駆けろ。
迷ったらその瞬間勝負は終わる。
エリッヒは頬をはたいて自らを奮い立たせた。
彼は向きを変えて草むらから飛び出すと、エミリアを助けに向かった。
背中から矢が飛んでくるが耳元をかすめただけだ。
次の矢までに彼女を助けなければならない。
二人の敵の間で一直線上に突っ込めば、同士討ちを恐れる敵は矢を射ることができない。
その一瞬の躊躇で距離は稼げる。
走りながら立て続けに二つ石を投げてエミリアを殴っている敵を威嚇する。
当たりはしなかったが、エリッヒの接近に気づいた敵は彼女を放り出して馬に跨ろうとした。
その瞬間、三つ目の投げた石が馬の頭をかすめ、跳びはねた馬から男が落ちる。
暴れる馬に蹴られて男が草の上に転がった。
逃げていく馬には目もくれず、エリッヒは倒れている敵に駆け寄って組み伏せた。
馬に腹を蹴られて動けなくなった敵は抵抗しなかった。
サファイアの指輪が小指にはまっている。
エリッヒは指輪をもぎ取ると、男の胸ぐらをつかんで引き起こした。
「狙いはなんだ?」
男は返事をしない。
まだ息をしているが口から血を流している。
「誰に頼まれた? 言え!」