流転王女と放浪皇子 聖女エミリアの物語
手を入れるとしびれるような冷たさだった。
エリッヒがこんな水で体を洗っていたことに驚いてしまう。
エミリアは鍋からお湯を注いで手頃な温かさにととのえた。
桶の水に自分の顔が映っている。
ひどいものだった。
泥を落とす。
その下から現れた顔はもっとひどい状態だった。
唇の端は切れ、血が固まっている。
目の横には痣があり、大きく膨らんでいる。
鏡ではないので色はよく分からないが、青痣のようだった。
元の肌が白いだけに、よけいに目立ってしまう。
エミリアは傷になるべく触れないようにしながら顔を洗った。
口の中も切れているのか、ゆすぐとしみる。
歯は折れていないようだった。
なにゆえにこうも襲われるのか、自分の置かれた立場が恨めしい。
しかし、決して落ち込んでいたり、心配しているわけではなかった。
命はある。
手足も動けば、目も見えるし、耳も聞こえる。
さっき食べたパンは血と泥の味が混じっていたが、おいしかった。
生きているのだ。
そばにエリッヒもいてくれる。
腫れがおさまれば痛みも引くだろう。
多少の不便は我慢すればよいだけだ。
誰もいない井戸端でエミリアは服を脱いだ。
エリッヒがやっていたように桶に服も入れて洗濯をしながら自分の体もぬるま湯で洗い流した。
あらためて自分の体を眺め回す。
胸にある『死神の手形』を忘れそうになるくらい傷だらけだ。
ただ、上半身には痣や傷がいくつもあったが、下半身にはそれほど目立つ傷はなかった。
当て布で補強された狩猟用ズボンのおかげらしい。
さっきエリッヒに触られた膝の下には痣ができていたが、それも骨に当たってできたものらしく、あまり大きなものではなかった。
ふと顔を上げると、中庭の入り口でさっきの少女がこちらを見ていた。
エミリアは思わず胸の痣を隠した。
下半身を隠す余裕はなかった。
エリッヒがこんな水で体を洗っていたことに驚いてしまう。
エミリアは鍋からお湯を注いで手頃な温かさにととのえた。
桶の水に自分の顔が映っている。
ひどいものだった。
泥を落とす。
その下から現れた顔はもっとひどい状態だった。
唇の端は切れ、血が固まっている。
目の横には痣があり、大きく膨らんでいる。
鏡ではないので色はよく分からないが、青痣のようだった。
元の肌が白いだけに、よけいに目立ってしまう。
エミリアは傷になるべく触れないようにしながら顔を洗った。
口の中も切れているのか、ゆすぐとしみる。
歯は折れていないようだった。
なにゆえにこうも襲われるのか、自分の置かれた立場が恨めしい。
しかし、決して落ち込んでいたり、心配しているわけではなかった。
命はある。
手足も動けば、目も見えるし、耳も聞こえる。
さっき食べたパンは血と泥の味が混じっていたが、おいしかった。
生きているのだ。
そばにエリッヒもいてくれる。
腫れがおさまれば痛みも引くだろう。
多少の不便は我慢すればよいだけだ。
誰もいない井戸端でエミリアは服を脱いだ。
エリッヒがやっていたように桶に服も入れて洗濯をしながら自分の体もぬるま湯で洗い流した。
あらためて自分の体を眺め回す。
胸にある『死神の手形』を忘れそうになるくらい傷だらけだ。
ただ、上半身には痣や傷がいくつもあったが、下半身にはそれほど目立つ傷はなかった。
当て布で補強された狩猟用ズボンのおかげらしい。
さっきエリッヒに触られた膝の下には痣ができていたが、それも骨に当たってできたものらしく、あまり大きなものではなかった。
ふと顔を上げると、中庭の入り口でさっきの少女がこちらを見ていた。
エミリアは思わず胸の痣を隠した。
下半身を隠す余裕はなかった。