王女にツバメ
痛いところをぐさぐさと突いてくる。
「定時までに仕事が終えられない人間ですよ、君と違って」
要領の良い方ではないことは自負している。でも、振ってくる仕事の量がおかしいのも分かっている。
周りの友人たちが結婚したり産休に入って、おめでとうと言う反面、焦りもあった。
「醤油、ないよ」
琉生が上の棚を覗き込んで言った。
「ないとダメなの? じゃあ今から買ってくるけど」
「え、裏葉さんが?」
「帰りにストッキング買おうと思って忘れてたから、ついでに」
部屋着にコートを羽織ってしまえば違和感はない。待って待って、と琉生が止めにくる。