王女にツバメ

何か欲しいものでもあるのか、とそちらを向いた。
慌てた様子でコートの袖を掴む。

「俺が行くから。それより風邪ひく前に髪乾かして」
「君、ストッキングの種類とかわかる?」
「いつも裏葉さんが穿いてるやつでしょ、伝線しにくいやつ」

なんで知ってるの。思わず口を開いてしまったけれど、コートを脱がされてハンガーにそれが戻った。

キッチンの火を止めて、琉生がばたばたとうちの鍵を持って出ていく。

閉まった扉を見て、部屋の中がとても寂しくなったように感じた。あたしはとりあえず、言われた通りにドライヤーで髪を乾かした。

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