王女にツバメ

今のうちに若い男と遊んで、結婚相手は別に見つけるとか。そんな器用な真似があたしにできるはずがない。

それに、今楽しければ良いという感覚があまり好きじゃない。罪悪感が芽生えるというか。

「あーもう勢いで結婚しとくべきだったかな?」
「それを今言います?」
「引っ越しもしなきゃ。あの部屋、一緒に棲んでたとこだし……」
「表札から元カレの名前抜きました?」
「すぐ抜いた」

油性マジックで書いたから消えなくて、切り落とした。すぐにゴミに出した。

家にあった彼のものも全部捨てた。半分ほどが空いて、私はそれを埋めようと必死だった。

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