王女にツバメ
思えば琉生のことを何も知らない。名字、どこに住んでるのか、家族構成、何が好きなのか。
地方によって大きさ、色、葉の付き具合なんかも違う。世界の広さを実感した。
あたしよりも感動している琉生の後ろ姿を見て、保護者になった気分。
「寒い!」
「わ、ほんとだ」
涼しい気候に生息する草花。ハウスに入るとひんやりとした空気に包まれる。
植物も少なく、お客も居ない。
「貸し切りだ」
「少し寂しい」
「そう? 俺は裏葉さんが居れば良いけど」
するりと手を掴まれ、指が絡む。思わず振り向いて誰か居ないかと確認してしまう。