王女にツバメ

「そういうの、いろんな人に言ってきてるんでしょう」
「言ってないよ、裏葉さんにだけ」
「はいはい、ありがとう」

てきとうにあしらって手を離す。ハウスを出て、出口に向かった。お土産屋さんで琉生が足を止める。

じゃらじゃらとぶら下がるキーホルダーを見ていると、青い美しい花が見えた。
名前なんていうのかな、と顔を上げてそれを探す。

「ブルーデージーだって。花言葉は幸福」

いつの間にか隣にいた琉生が一覧になっている中から、それを当てた。

幸福。あたしとは程遠くて、とても良い。

ふと幸福な王子の話を思い出す。いつしか図書館で読んだことがある。

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