王女にツバメ

裏葉さんの箸が止まる。

「あたし、愛した人には不幸でも良いから生きていて欲しいって思う」

人生は良い話で終わることはない。
天国はとても遠い場所にある。

「俺も同じ。でも一緒に生きてるからには絶対に幸せにするし、なってもらう」

神様や天使が見ていなくても。

きっと、俺らの物語があるとすれば、きっとここからだ。今までのは序章に過ぎない。

裏葉さんがはにかむ。

「……そういうの良いから」
「んーどういうの?」
「早く食べて帰るよ」
「はーい。風呂一緒に入る?」
「じゃなくて、引っ越し準備!」

必死な返答に、俺も笑った。

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