王女にツバメ
オスカー・ワイルドの書く物語の中で、珍しく救いのある話。
目をパチクリさせ、裏葉さんは口を開く。
「ふたつ?」
「そう。天使は王子の鉛の心臓と、ツバメの死骸を持っていった。それは正しいと言われて、二人は天国で暮らした」
「知らなかった。ツバメが王子の像の元で死んじゃって悲しい話だと思ってた」
どうして急に幸福な王子の話になったのか。ツバメのことを考えていたからか、と想像するだけだった。
俺は味噌汁を持って啜る。
「ツバメは王子を愛していたし、王子もツバメを愛していたから、結構良い話じゃない?」
死んで終わったとしても。