罪作りな彼は求愛方法を間違えている
目を開けると、戸惑い、何か探るような顔が目の前にあった。
「千花、頼むから黙って俺と一緒に来て欲しいところがある。来てくれるか?」
いつも自信に溢れているこの人は、こんな表情もするんだと思ったら、コクンと頷いていた。
「そらも連れて行きたい…」
んっ?
どうしてと思ったが、深く考える余裕もなく彼がそらくんを手懐け簡単にキャリーの中に入れていた。
お腹が満腹のそらくんは、抵抗する気もなかったらしくキャリーの中で大きくあくびをして丸まった。
「なるほど、衣食住に満足していれば、猫でもおとなしくなるってことか!」
そんなわけないでしょと喉まで出かかった時、何かひらめいたように笑う彼の顔を見て、聞こえなかったふりを選んだ。
時間が経つにつれ、やっぱりやめると言いたくなるが、そらくんを人質にとられた形の今、ついていくしかなく、彼の呼んだタクシーに乗って着いた先は、商店街の南にある割と最近建てられたマンションだった。
コンシェルジュがいるような高級なマンションに、当たり前の顔をして入っていく高橋さんを、出迎えたのは、白髪の紳士だった。
「高橋様、お帰りなさいませ」
「石黒さん、彼女は俺の婚約者です。今日から一緒に住みますので、よろしくお願いします」