罪作りな彼は求愛方法を間違えている
かしこまりましたと、頭を下げた運転手は、雇い主である男が女を愛しそうに抱き上げて、女のマンションであろうエントランスに入って行く姿を見送った。
そして、車に乗り込んでから、仕事以外で初めて見る雇い主の一面に『嘘だろ』と叫ばずにはいられなかったのだった。
抵抗する力も奪われた私が、彼に言われるまま部屋の鍵を開けると、私の帰りを待っていたそらくんの熱烈な歓迎を受ける。
ここ数日、遅い帰りの私の足元で、飛び跳ねて抱っこしてとミャーミャーと鳴いている姿を見ると、高橋さんを待つ自分と重なり毎回、可哀想な事をしているという罪悪感に陥る。
「遅くなってごめんね」
と、そらくんを抱き上げ頬擦りすると、必ず、頬を舐めてくる。
「お腹空いたね。今、あげるからね」
キッチンでそらくんにご飯を食べさせ振り返ると、スーツの上着を脱いでソファで寛ぐ高橋さんと目があった。
そこから一歩も動けなくなった私を、来いと指先だけ動かして呼ぶ無表情な高橋さんは、どこかの国の王様のように威圧的だった。
ブンブンと顔を左右に振り、抵抗する。
チッと大きく舌打ち立ち上がった彼が、数歩で距離をつめてきた恐怖に目を閉じると、優しく抱きしめてきた。
「脅えないでくれ」