罪作りな彼は求愛方法を間違えている

コウ兄から至急の呼び出しがあったあの雨の日、ぐったりしたそらくんを受け取り、夜間の動物病院に駆け込んだ日を思い出す。

ぐったりとした呼吸の荒い猫をタオルに包んで少しでも温もりを分けようと、あの日着ていた厚手の上着の胸の中に入れて、冷たい雨風が当たらないように役に立たない傘さして前屈みになり、落とさないように小走りで急いだ。

たどり着いた夜間の動物病院でそらくんは入院し、先生達の献身的治療と看護のおかげで起き上がれるようになると、餌を少しずつだが食べ始めた。その頑張る姿を見た私の中で母性愛が目覚めたらしい。

『この子、私が育てます』と先生に直談判し、健康状態良好の◎をもらい、いつでも退院オッケーの許可をもらったのはその2日後だった。

既に家族に迎える気満々で名前も考え、必要な物全て揃えて準備万端でその日を待っていた私は、普段なら週末に溜まった仕事に追われて定時で帰れる日なんてないのに、今回は他のスタッフに丸投げし急いで病院に向かい、退院の手続きを済ませ家に連れ帰った。

キャリーの中で、不安そうに部屋の様子を伺うそらくんを刺激しないよう、私はソファの上で晩ご飯のコンビニお握りを食べたり雑誌を読んだりして、そらくんの気配を伺う事、数時間。
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