罪作りな彼は求愛方法を間違えている
不満そうに前足と背を伸ばしダミ声で唸ると、彼の肩に前足を乗せて私の頬をペロリと舐めるので、そらくんに顔を向けたら、私の唇をペロペロと舐め始めた。
「…んっ、そらくん」
それを見ていた男が気に入らないとばかり、そらくんの口を手のひらで覆うと、軽く噛まれたらしくパッと手を離し、そらくんに向かって低い声を張り上げた。
「痛…そーらー、やりやがったな」
そらくんが、フンといったように顔を背けたら、それがまた、彼を怒らせる。
「お前、猫のくせに一丁前にヤキモチを妬いてんじゃねーぞ」
何か言い返すようにそらくんは、「ニャーニャーニャー」と言うのだが、言葉が通じないのでわからない。
だが、高橋さんには通じたらしく勝ち誇ったように顎を上げ見下ろすようにそらくんに笑っていた。
「人間と猫は恋人にはなれないんだぞ。それに、お前じゃ、…千花を抱けない」
一旦間をおいて、艶ぽく流し目を向けられて、つい私は、彼に抱かれている自分を想像してしまった。
そんな私になのか、そらくんに勝ち誇る高橋さんのどちらかに、ミャーと歯をむき出しにして怒るそらくんに驚く私。
だが、彼は驚きもせずにそらくんに向かって
「ざまぁーみろ」
と、大人気なく言う。