もう少しだけ
暖冬を超えた桜は

例年よりも遅く咲いた。

暖冬を超えた私は

例年より早くキビキビと動かないと。

rachael yamagataの声に

新生活に対する不安と期待と不安を膨らませていた。

「学生としての自覚を」
「学生として相応しい行動を」

口のくさい先生や、

お腹の出た親に言われ続けてきた。

「大人としての自覚を持て」

と、

今まで努力して学生を装って来たのに。

大人の為に装っていてやったのに。

今日、3杯目のエスプレッソを流し込んだ。

大人になったら私も、

口がくさくなって、お腹が出て、

歳の下の人達に

愚痴愚痴言うようになるのだろうか。

"自分がそうされたから"
"親や先生がそうだったから"

そんな、野暮な理由で

私は、大人になるのだろうか。

私が選ぶときにこだわった和室は、

"大人の自覚"を持つにつれて、

なんでもないような事に、

障子にうっすら浮き出る白い花たちが

寂しそうに私を見てくるのだろうか。

遅咲きの桜、干上がる湖、

そんなのも気にならない程の頭は、

目の前にある文明の利器振り回されて、

振り落とされて。

夜。一人。

まだまだ子供。でいたかった。

大人にならざるおえない環境に、

置かれた子供は、

怯えながらも、大人になってゆく。

哀しいかな、今の気持ちも

大人の私には遠い昔の話になって、

面白くもない話に花を咲かせるように。

まだ、まだ、もう少しだけ、

子供でいたかった。

痛かった。
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