熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
静かに立ち上がった詩織は、スニーカーが濡れてしまうのも気にせず川へ入っていく。
しかし、蝶のことに気を取られすぎたらしく、うっかり川床で足を滑らせた。
「きゃっ」
「危ない!」
とっさに俺も川へ入り、後ろに倒れる彼女の体を支えようとしたのだが――。
彼女を抱き留めた瞬間、バシャン!という激しい音と思に水しぶきを上げて、俺は浅い川床に尻もちをついてしまった。
蝶の大群はあっという間に逃げてしまい、スケッチの続行も不可能になった。
「梗一、大丈夫? ごめんなさい、私のせいで」
とりあえずふたりで岸に上がったが、俺はずぶ濡れ状態。幸い、詩織の方はケガもなく服も濡れなかったが、彼女は逆に申し訳なさそうだった。
「いや、詩織が無事でなによりだよ。にしても、今日は全くカッコつかなくて嫌になるな」
濡れた髪をかき上げながら、自嘲する。
森の中では詩織についていくのがやっとで、川で彼女を助けたかと思えば、自分が転倒してしまうなんて、いいところがまるでない。